作品の具体的な内容・手法
作品は、新小平駅に設置された15面の既存パネル区画を活用し、各作品を1マスあたり縦1050mm×横870mmのサイズで展開する連作の平面作品として制作します。15面それぞれを一つの「窓」と見立て、短い言葉、視覚作品、QRコードによる短い音作品を対応させます。全体としては、15枚を通して新小平駅に宿る小さな記憶や気配が立ち上がる構成を目指します。
表現内容としては、木漏れ日、雨上がりのホーム、風の通り道、誰かを待つ時間、会う前の静けさ、ひとりでいた時間、すれ違う人、通り過ぎる季節など、駅や周辺で感じられる情景や感情をもとに、各パネルごとに異なる小さな世界を描きます。視覚表現は、私自身のアクリル画やフィンガーアートの感覚を生かし、柔らかな色彩、余白、円やにじみ、光の気配を含んだ静かな画面を想定しています。
素材については、雨や湿気に配慮し、アクリル板、ポリカーボネート板、アルミ複合板等の耐候性のある平面素材を想定しています。必要に応じて、手描きの原画を制作したうえでデータ化し、各面に展開する方法も検討しています。安全性、耐久性、反射の出方、施工条件を踏まえ、最終仕様は主催者・施設管理者と協議のうえ決定します。
制作方法としては、まず地域の方々や駅利用者へのヒアリングを通して、新小平駅にまつわる小さな記憶や待ち時間の感覚を集めます。たとえば、「この駅で誰かを待った思い出」「印象に残っている季節や光」「ひとりでいた時間に感じたこと」などを言葉として受け取り、それをもとに15の短い情景と言葉を構成します。その後、それぞれの情景に対応する視覚作品と、30秒〜1分程度の短い音作品を制作します。
音作品は、ピアノを中心とした30秒〜1分程度の短い音を想定しています。各パネルに対応するQRコードを読み取ることで、利用者は短いテキストとともに、その「窓」に対応した音を任意で聴くことができます。テキストは、情景や感情をすくい取る短編の詩のような短文を想定しており、一人で静かに触れられる体験を目指します。駅空間に直接音を流すのではなく、個人のスマートフォン等を通じて体験する形式とし、通行や駅の音環境を妨げない形にします。
設置方法については、説明会で共有のあった条件も踏まえ、ビス固定を含めた方法を主催者および施設管理者と協議のうえ決定します。安全性、原状回復性、既存設備への影響に配慮しながら、指定条件に沿って施工します。
目に映るもの
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15の窓と15の音
ー小さな記憶が宿る駅


作品コンセプト
本作品は、新小平駅に並ぶ15枚のパネルを、地域の人や駅利用者の小さな記憶を映す「15の窓」として捉え、そこに15の短い音を重ねる作品です。
駅は、誰かと待ち合わせをしたり、少し早く着いて一人で立っていたり、雨上がりの空気や夕方の気配を感じたりする、日常の中の小さな時間が積み重なる場所です。新小平駅もまた、大きな出来事よりも、ひとりひとりの静かな記憶や感情がそっと宿る駅なのではないかと感じました。
私は本作で、新小平駅の15枚のパネルを、単なる展示面ではなく、それぞれに異なる記憶や気配が立ち上がる「窓」として表現したいと考えています。木漏れ日、雨上がりのホーム、風の通り道、誰かを待つ時間、会う前の静けさ、ひとりでいた時間、すれ違う人、通り過ぎる季節など、駅に宿るささやかな情景や感情を、地域の方々や駅利用者へのヒアリングをもとに集め、15の短い言葉と15の音へと変換します。
それぞれの窓には、誰かの思い出や感覚があり、それぞれの音には、その時間の空気や余韻があります。利用者は、気になった窓のQRコードを読み取ることで、短い詩のような言葉と、30秒〜1分程度のピアノの音を一人で静かに味わうことができます。待ち合わせの合間、少し立ち止まった時間、ひとりでいる時間に、ふとその駅の空気が違って感じられるような体験を目指します。
本作品は、大きな物語を一つ語るのではなく、小さな記憶の断片を集め、その駅ならではの静かな豊かさを立ち上げる試みです。
それぞれの窓に、誰かの記憶がある。
新小平駅を、そうした個人的な記憶と静かな音に出会う場所としてひらきたいと考えています。
アーティストとしての経歴・活動実績
作曲家・文化設計プロデューサー。音楽、語り、映像、地域文化、参加型アートを横断し、土地や人の記憶を作品化する活動を行っている。自然や場所そのものを劇場として捉える「Nature Theater」を構想し、風景・歴史・人の営み・自然の気配を、音楽・物語・空間体験として立ち上げる表現を探究している。
瀬戸内国際芸術祭では、宇野港オープニングの企画演出を担当し、地域の子どもたちと共に町の歌を制作。発表当日は観客も含めた約600人で大合唱を行うなど、地域とともにつくる共創型プロジェクトに携わった。KSBふるさとソングプロジェクトでは、各学校や地域と連携し、まちの魅力を歌として残し、子どもたちと歌い継ぐ取り組みを行った。ダイワハウスとの「浮世音」制作プロジェクトでは、阿蘇や北海道など各地に滞在し、地域の方々へのヒアリングをもとに、その土地の風景や記憶を映像と音楽の作品へと昇華するアーティスト・イン・レジデンス型の制作を行った。
作曲家として、イブラ・グランド・プライズ(イタリア)作曲家部門名誉賞、ULJUS国際コンクール(セルビア)映画音楽部門第1位を受賞。カンヌ国際映画祭入選作品「ORIGAMI」テーマ曲提供、KSBスーパーJチャンネルのメインテーマ曲担当、NHK岡山「いにしえピアノ」メイン出演、G20会合(岡山)歓迎レセプションでの演奏など、映画・テレビ・国際文化交流・公共性の高い場での音楽制作・演奏を行う。
大阪・関西万博インドパビリオン映像音楽演出、ムーミンバレーパークにおける映像・音・フィンガーアートの色彩を組み合わせた空間演出およびクリエイティブディレクション、第22回岡山芸術文化賞準グランプリ、第1回福武教育文化賞、おかやまアワード2018特別音楽賞などの実績がある。また、視覚表現の活動として、ニューヨークでのポストカード展にも絵画作品を出展している。
近年は、誰でも指で円を描くことができる「フィンガーアート」を通じて、禅、平和、つながり、循環を象徴する参加型アートにも取り組んでいる。本応募では、これまで培ってきた地域共創・滞在制作・音楽化・空間演出の経験をもとに、武蔵野線各駅の土地の記憶を、視覚作品と音の体験へと展開したいと考えている。
想い・自己PR
MUSASHINO ART RAILWAY FESTIVALの魅力は、駅や沿線を、単なる移動の場所ではなく、その土地に流れている時間や人の営みに出会う場所として捉え直そうとしている点にあると感じています。私はその考え方に強く共感しました。
新小平駅について考えたとき、歴史的に大きく語られる観光資産や象徴的なスポットだけが、その地域の魅力なのではないと思いました。むしろ、誰かを待った時間、ひとりで立っていた時間、季節の空気を感じた瞬間、何気なく見ていた光や影など、人の中に残っている小さな記憶そのものに、その駅や地域ならではの物語が宿っているのではないかと感じました。
大きくは語られないけれど、その人にとっては確かに残っている時間。そうした個人的な記憶は、一見するとささやかなものですが、集まることで地域の空気や土地の魅力を立ち上げる大切な要素になると思います。私は今回、そのような「小さな記憶」にこそ価値があると考え、新小平駅では15枚のパネルを、誰かの記憶を映す15の窓として構成する企画にしました。
本作品では、地域の人、駅利用者、学生、高齢者、子どもなどから少しずつ記憶や感情を集め、それを15の短い言葉と15の短い音へと変換します。大きな物語を一つ提示するのではなく、誰かの中にある静かな記憶を、駅の中でそっとひらくような作品にしたいと考えています。
私はこれまで、音楽、地域の記憶、参加型アートを組み合わせながら、土地に宿る見えにくい価値を作品化する活動を行ってきました。今回も、作家が一方的に意味を与えるのではなく、その場所を使う人々の記憶や感覚に耳を澄ませ、それを視覚と音に変えていくことで、新小平駅ならではの静かな魅力を立ち上げたいと考えています。
目立つ観光資源があるから魅力的なのではなく、そこに生きる人の記憶があるからこそ、その場所は魅力を持つ。
そのことを、新小平駅での小さなアート体験として形にしたいです。